8020運動の成果と現状

8020運動の成果と現状

平成元年にスタートした8020運動が
実を結び、50%以上の人が達成

“80歳になっても20本以上自分の歯を保とう”を目標に掲げた「8020運動」がスタートしたのは1989(平成元)年で、30年以上が経過しました。当時は女性の平均寿命がようやく80歳に達した頃で、実際に80歳で20本以上自分の歯を保っている人の割合は7%程度、80歳の人が保っていた歯の本数は平均4〜5本にとどまっていました。人間の永久歯は28本で、親知らずを含めると32本です。20本以上の歯を保てれば、ほとんどの食べ物をしっかりとかむことができ、おいしく食べることができるのです。このため20本という目標が掲げられました。
その後、「健康日本21(第二次)」(2013=平成25=年度から10年間の計画)において、8020運動の具体的な目標として2022年度までに50%を達成することが掲げられました。しかし2016(平成28)年に発表された歯科疾患実態調査の結果により、目標よりも5年以上も早い時期に50%を超えたことが明らかになりました。これにはいくつかの要因があると考えられます。歯科医師が患者の歯を残す努力を続けたことに加えて、国民の歯の健康に対する意識も高まりました。50代以降、特に高齢者の方々には、いつまでもおいしく食べることを目標として、お口の健康管理に気を配る人が増加したと考えられます。

歯の状況(20本以上の歯が残っている人の割合)
歯の状況(20本以上の歯が残っている人の割合)

高齢者のお口の健康が増進する一方、
20~30代のお口の健康状態は
変わらない

高齢者にお口の健康管理の重要性の浸透が進む一方、20~30代など若い世代のお口の健康はあまり変化が見られません。2016(平成28)年の厚生労働省の調査によると、むし歯を持つ人の割合は、20代前半で改善が見られるものの、25~34歳で90%以上、35~44歳では99%に上ります。

注目されるのは、むし歯と並ぶお口の2大疾患である歯周病が、20~30代を含めた多くの世代で増加していることです。歯周病がある程度進んでいる目安とされる「4mm以上の歯周ポケット(歯と歯肉の境目にある隙間)を持つ人」の割合は25~34歳では32.4%と5年前の2011(平成23)年の2倍近くに達しています。そして35~44歳では42.6%と半数近くに迫っています。

う歯を持つ者の割合の年次推移(永久歯:5歳以上)
(%)
年齢階級
(歳)
平成5年
(1993年)
平成11年
(1999年)
平成17年
(2005年)
平成23年
(2011年)
平成28年
(2016年)
5~9 36.3 24.3 14.6 10.0 8.2
10~14 86.4 69.7 57.7 34.7 19.7
15~19 94.9 88.9 73.9 63.7 47.1
20~24 97.7 96.0 90.5 89.9 78.6
25~34 98.7 98.6 98.5 96.2 90.2
35~44 99.5 99.3 100.0 98.8 99.3
45~54 97.1 98.7 98.7 99.1 99.5
55~64 91.9 94.8 97.4 97.5 98.2
65~74 76.9 83.7 88.5 91.9 95.0
75~84 54.5 65.2 68.7 84.1 87.8
85~ 39.4 41.8 58.3 65.1 72.1
4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合の年次推移

※歯周病とは
歯を支える骨や歯肉が壊されていく病気です。健康な状態では歯の根と骨の間は、歯根膜という線維でつながり、歯が骨から抜け落ちないようにしっかりと支えられています。歯周病菌と呼ばれる口の中にいる細菌が歯を支えている歯周組織を壊し、最終的には歯が抜け落ちてしまう病気が歯周病です。
歯周病の初期は「歯肉炎」と呼ばれ、歯肉に変化が起きます。歯と歯肉の境目が赤く腫れ、触れただけで出血するようになります。さらに進行すると「歯周炎」と呼ばれる状態になり、歯肉の腫れや出血だけでなく、歯を支えている骨が壊され、歯と歯肉の隙間が深くなり、歯周ポケットが形成されていきます。歯周病菌がさらにこの隙間に沿って侵入すると、根の先の方へと破壊がさらに進行し、歯がグラグラになり、最終的には歯を抜かざるを得ない状況に至ります。

20~30代は定期的な歯科健診を
受けていない人が多い

20~30代のお口の健康状態が向上しない背景には、定期的に歯科健診を受けている人が少ないことがあります。日本歯科医師会が2018(平成30)年に行った調査によると、「現在は治療を受けていないが、定期的にチェックを受けている」と答えた人は、20代が21.7%で、成人で最も少ない割合となり、30代も29.4%でした。特に男性は20代で20.8%、30代は25.8%にとどまり、関心が低いことが示唆されます。
一方、お口の健康に黄信号がともったサインともいうべき状態が、20~30代に少なからず見られることがわかってきました。平成27年国民健康・栄養調査によると、食事中に「左右両方の奥歯でしっかり噛みしめられない」と答えた人は30代で23.9%、20代でも18.1%存在し、「口の中の渇きが気になる」と答えた人も30代で16.3%、20代も15.5%でした。
実際に若い世代は、噛まなくても良いような食事が増え、口腔(こうくう)機能である咀嚼(そしゃく)力(噛む力)が弱く、口腔機能の低下を招いている可能性もあると考えられます。
高齢者にお口の健康管理意識の浸透が広がりつつある現在、次にその意識の向上が求められているのは、20~30代をはじめとする若い世代ではないでしょうか。

歯科治療の状況
食事中の様子(20歳以上、男女計、年齢階級別)
よ坊さん 日本歯科医師会PRキャラクター
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日本歯科医師会

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