子どもの頃から気を付けたい「正しい食べ方による食育と歯並び」

子どもの頃から気を付けたい「正しい食べ方による食育と歯並び」

子どものお口について、多くのお父さん、お母さんが気になるのが歯並びでしょう。歯並びには親のあご骨のかたちなどの遺伝的な影響が認められる一方、正しくない咀嚼(そしゃく)(食物を噛むこと)や嚥下(えんげ)(噛んだ食物を飲み込むこと)などの食べ方、発音や呼吸に関する望ましくない習慣(口腔(こうくう)習癖)などが、お口の機能の発達不全に影響することがあります。このため正しい食べ方などの習慣を身に付けることが重要になります。

正しい食べ方などの習慣を身に付けたことで歯並びが改善した一つの症例をご紹介します。上下の歯がうまく噛み合わず、前歯がきれいに並んでいない10歳児が患者さんです。歯の大きさやあごの骨のかたちなどに遺伝的な問題は認められないものの、唇を開けたまま音を立てて食べるほか、口呼吸の傾向があり、発音の際に舌が上下の前歯に挟み込まれる状態が確認されました。そこでこれらの問題を解決するために正しい食べ方などを身につける「口腔筋機能療法(MFT)」と呼ばれる練習(訓練)を行いました。その結果、約5年後には歯並びが改善されました。
このように日頃の習慣と歯並びには深い関係があるのです。
子どもが美しい歯並びと正しい噛み合わせになるためには、特に正しい食べ方を身につける「食育」が必要です。子どもによく見られる間違った食べ方の例を以下にご紹介します。

●奥歯でよく咀嚼しないまま飲み込む
咀嚼とは奥歯で食べ物を十分にすり潰すことですが、奥歯ではなく前歯だけで噛んでしまう人は、舌が食べ物を奥歯の近くに送るように動けていません。またこの場合の下あごの動きは主に開閉のみで、水平方向にはあまり動かさないことから、あごの筋肉や骨の成育に悪影響を与える可能性があります。

●口唇を開けたままクチャクチャ食べる
この食べ方は口呼吸を習慣にしている人に見られることが多い癖です。口呼吸をしていると口を閉じる力が弱くなり、また習慣的に口を閉じると呼吸が苦しくなるように感じてしまうため、咀嚼の際にも口を開けてしまいます。このような食べ方では、歯列に対する筋肉のバランスが崩れ、歯並びの成育に悪影響を与えることも考えられます。

●飲み込むときに顔の筋肉を強く収縮する
咀嚼した食べ物は通常、舌の機能によりのどの方に送られます。しかしこの舌の運動機能が不十分な場合には、食べ物が前の方でとどまったままで、自然な嚥下反射も起きにくくなります。このような場合には無理やり飲み込む必要があるために、唇やほほの筋肉を異常に収縮させます。その時に舌を歯の裏側から強く押し、上下の歯の間に突き出すと、歯列に異常な力が加わるため、歯並びに悪影響を与える可能性があります。

現在はやわらかい食べ物があふれているため、正しい食べ方を身につけなくても、食事を取ることができます。しかしそれを続けてしまうと、子どもばかりか大人になっても歯並びや嚥下(飲み込み)をはじめとする口腔機能に影響を与えることがあります。歯科から提案する食育として“唇を閉じて奥歯でしっかりと咀嚼する”ことを意識できれば、正しい食べ方に近づくことでしょう。

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